プク [家族]

出会いも別れも突然にやってきた。


プクは私が小学生の頃、お正月の朝に我が家に突然やってきた犬だ。恐らく雑種だったのだろうが、毛並みはゴールデンレトリーバーのように綺麗だった。まだ産まれてそう時間も経過していないのか、人間に換算すれば幼稚園児といった具合の幼い犬だった。

そのプクが祖母が雨戸をあけた瞬間に家の中に飛び込んで来たのだった。私と兄はもともと犬が飼いたかったので「これはチャンス」とばかりに両親に頼みこむ。プクが家族に加わるのにそれほど時間はかからなかたように記憶している。


初めての散歩、冬の田圃で一緒に遊んだ事、一緒にプクの小屋に入ったりした事、楽しい思い出をいっぱい作った。利口な犬ではなかったが、どこか愛敬があり憎めないヤツだった。確かに真冬の散歩はきつく、母親にまかせてしまったことも多かった。「犬の世話はオレがする」と啖呵を切ったくせに、プクのお世話ができない我がまま小学生の自分もいたことは、今でも思い出す後悔の念。「もっと遊んでやればよかった・・・」



その後悔を初めて感じたのが小学3年の秋。庭にはピンクのコスモスが咲いていた。朝、母親が私達兄弟の部屋にやってきて言った。あまりに予想外、突然の事だった。


「プクが死んでいるよ・・・」


「これは悪い夢だ!」そういって兄は泣いていた。私は何が起こったのか理解できず、庭先のプクの小屋の前に向かった。小屋の前でプクは横たわっていた。息はしていない。口から少量の血液が流れ出ていた。


私はもう動かないプクの背中をなでた。まだ温かかった。「きっと朝になれば自分の具合の悪さに気づいてくれる」そう思って朝方まで頑張ったのだろう。確かに昨日のプクは様子が変だった。夕方になれば「散歩に連れてけ!」とばかりにワンワン吠えるプクだったが、昨日はいっさい吠えていなかった。食事もあまり食べなかった。どうしてこの異変に気づいてやれなかったのか。「吠えないから今日の散歩はなしだな。ラッキー!」なんでそんな発想しか湧かなかったのだろうか。ここでようやく私の目から涙が零れ落ちた。



庭のコスモスを摘んでプクの体の上に並べた。両手を合わせ祈る格好をする。しかし、祈るというよりは懺悔の気持ちだった。「本当にダメな飼い主だった。ごめんなさい・・・」




この歌を聞くとプクに対しての後悔の念で涙が出てくる。

http://www.youtube.com/watch?v=DRfw6YWTLTA

エイジアエンジニア 犬の歌~ありがとう~



それ以来動物は飼っていない。しかし、私の子供ももう少し大きくなれば「ペットが欲しい」なんてことを言うのかも知れない。今度ペットを飼う時はせめて後悔しないようにしたい。それがプクに対する供養になると信じている。

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