プレミアムモルツ物語 その⑥ [家族]
最寄りのコンビニへ走る。
奥様の道の選択は熟知している。もし、買い物に行っていたのなら必ず出会えるはずだ。
しかし、コンビニ内にも家族の姿はなかった。
来た道とは別ルートを選択し家に戻る。淡い期待を持って家に入るが、やはり3人の姿はなかった。
「どうしちまったんだよゥ!?」
ダイニングの前でうずくまる。喧嘩したせいなのか?それとも子供を寝かしつけるために散歩に行ったのか?もう訳がわからなくなっていた。あのプレミアムモルツにはどんなメッセージがこめられているんだ!?まさか「さよなら」・・・
「冷静になれ」
おかしくなった精神に喝を入れる。冷静に考え直そう。
家に置いてあるものをチェックしてみる。何を持って出ていったのか分かり、行き先も判断できるはずだ!!
無いもの
1)今日買った奥様の靴
2)長男のサンダル
3)次男を抱えるだっこヒモ
4)家の鍵
あるもの
1)携帯電話
2)財布
3)自家用車
4)長男をのせるベビーカー(散歩時には基本的に使用)
5)兄弟のオムツといった生活用品
財布をもたない時点で強烈な心配が私を襲う。どう考えても10分もすれば家に帰って来る程度の持ち物だ。
様々な悪い考えが頭をよぎる。
産後の診断でも「産後ウツかも知れない」との診断があった。
「階段から家族三人で首をつっている所を想像したことがある」と冗談を言ったことも。
頭を左右にふって嫌な予感を振り払う。
これは両親に電話するしかない。
私は車に乗り込み、最寄りの書店目指して走り出した。歩いて行けるとすればここが限界だと思ったし、他に行き場は考えられなかった。近くの公園なんかは、コンビニに行く前に既に確認している。車を走らせながら、双方の実家に電話する。一時の猶予もない気がした。
その⑦へ続く
とんでもない壮絶なドラマじゃないか!!
by tengonsan (2011-09-07 20:29)