プレミアムモルツ物語 その⑦ [家族]
深夜12時だ。常識的に電話できる時間ではない。
しかし私は焦っていた。奥様が双方の両親に頼る部分がある為、どちらかの実家に行った可能性は高いと思った。容赦なく電話する。双方とも母親が出た。
「奥様と子供二人来てないよね?」
「どうしたの?」
「奥様と喧嘩してて・・・仕事から家に帰ったら全員いなくなってて・・・」
「来てないよ」
私はいきさつを説明する。結果はどちらの家にもいなかった。親に心配をかけただけの作業になってしまった。私の焦りはピークに達する。
閉店前の本屋に滑り込む。やはりここにも姿はなかった。もうあてがない。半泣き状態で車をユーターンさせる。家に到着もやはり3人はいない。ただ、ダイニングにある奥様の携帯が緑色に点滅しているだけだった。着信ありを通知する信号だ。
「これは緊急自体だ。」
やってはいけないとは思いつつ、奥様の携帯を開ける。
確認していないメールは8時半頃のママ友Aからのものだった。「お風呂に入っていたためメールに気がつかなかった」というものだった。
その前の私のゴメンナサイメールとママ友Bのメールは確認済であった。「明日何して遊ぶ?」的な内容だった。
着信、発信履歴も電話、メール双方確認する。
結果はなんの履歴も残っていなかった。ママ友に頼ったという線も消えてしまった。ますます事故の可能性が膨らんだように感じ、恐怖を覚えた。
しかたがない・・・
私は自分の携帯を取り出す。親指は 1 1 0 を押していた。
次の展開が気になりすぎて
仕事にならない。
勘弁してくれ。
by tengonsan (2011-09-10 20:59)