グリンパ ~雪にあいに行こう~ 最終話 [旅]
ソリゲレンデから一時離れる。やりたくないものを無理にやる必要はない。「せっかくだから」と親は思うものだが、子供からすれば迷惑だったりするだろう。再び遊園地ゾーンへ向かった。
ジェットコースターといった激しめのアトラクションもあったが、一番目立っていた観覧車にみずきが乗りたいと言い出した。3歳以上は500円。なかなかの料金だ。せめて小学生にあがる前の子供くらい無料にしてほしかった。家族4人で1500円の出費だったが、グリンパ最後の思い出にと乗り込んだ。
奥様とのる観覧車は何年ぶりだろうか。
ましてや、家族全員で乗るのは初めてだった。少しずつ上昇していく個室。窓から大きな富士山が見えた。雪化粧してとても美しい。山の上に建っているため、空を飛んでいるような不思議な気分になった。ふと家族を見つめる。なんだかとても幸せな気分になった。
頂上付近でみずきが不意に言った。
「おちたらいっぱいバンソーコーがいるねぇ」
絆創膏をはるレベルではない。死んじゃうぜ。そう突っ込んだ私にみずきは「バンソーコーがないからおちれないな~」と言った。なんだそれ。怖さを知らないというのは恐ろしい。知識や経験がないからあまり怖さを感じないのかな、ふと外を見る。その瞬間、得体の知れぬ恐怖が私を包みこんだ。
もともと高い所は平気な方だ。むしろ飛び降りたい衝動にかられる。そんな私が観覧車からの景色に足を竦ませていた。平静を装い家族に微笑みかける。「こんなに幸せな時にビビってどうするよ」そう思った。しばらくして恐怖の原因が分かった。
それは自分にせまる高所の恐怖ではなく、今目の前にいるこの家族を、幸せを失うことに恐怖を感じているのではないかと、そう思った。愛するもの、守りたいものがあるからこそ人は死を恐怖するのではないのかと。
恐怖を感じ、死にたくないと必死になるのはそれはそれで素晴らしい人生を送れていることの証明なのかも知れないと。
そんなことを考えている間に地上へと生還した。
置いておいた凸ソリを抱えてグリンパを後にする。このソリを用意してくれた父親も私たちに対してそんな気持ちだったのかなあ。親になって自分の親の気持ちを考えた私の前をみずきが、つかさがはしゃぎまわっている。真っ白な雪原に風が走る。「みんなありがとう。」感謝の気持ちを胸に家路についた。
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ビックリするくらい良い話だな!!!!
昨日は後輩の結婚式に出て、
何だか最近、あったけぇ話でいっぱいだ。
やっぱり家族、なんだかんだ家族ですね。
by tengonsan (2013-02-24 20:45)
いいもんだぜ~。
ウザい時もあるけどね~。ポヨンメー!!
by パインサー野郎 (2013-02-24 21:18)