サヨナラバス その3 [不思議話]
四方を山に囲まれた田園地帯、バスは走り続けている。
『現にこうやって仕事しているじゃないか!』そう思った私をすぐさま違和感が襲う。確かに仕事中ではあるが、現世で行っている訳ではない。私は現世を飛び越え死後の世界へと向かう非常に曖昧な空間に身を置いているのだ。この電話が繋がっていることすら奇跡的なことなのかも知れない。
「何とかなるのでしょうか・・・」恐る恐る確認する。するとあたかも当然のような声で恐ろしいセリフが返ってきた。
「パインサーさん、その事故って2ヶ月も前のことですよ」
足元に手汗にまみれたスマートフォンが転がった。
目の前が真っ暗になる。軽いめまいを覚えると同時に膝の力も一気に抜け、シートに崩れ落ちる。どうやら私は電話しながら立ち上がっていたようだ。まあ、そんなことはどうでもよかった。今回の仕事における違和感や失敗、その全てが見事に繋がり理解できた。簡単なことだった。
私は2ヶ月前に死んだのだ。
不慮の事故により自分でも気づかないほどにあっけなく。自分のことでありながら、私はそんなことにも気づかずに仕事をしているつもりでいたのだ。あの花笠娘同様、死後の世界へ送り出してもらうためにサヨナラバスに乗せられていたに過ぎないのに・・・。
何故だか少し笑えた。そして涙が一筋ほほを伝う。転がったスマートフォンからヤツの「もしもし」と繰り返す嫌な声が響いていた。バスは静かにそして確実にその歩みを進めていた。
最終話へ
パインサー野郎を今回見送るのは誰なんだ?!
年越しまで我慢できん!!
by tengonsan (2013-12-27 09:06)
そんなに深い話じゃないから期待しないでくれ(;´д`)
by パインサー (2013-12-27 10:10)