プレミアムモルツ物語 その④ [家族]

その後も状況は悪化の一途をたどる。

私は大人げなく怒鳴り、二階に上がっていった。「寝るから」とつげる。

奥様は何も答えず、泣き続ける。罪悪感も感じるが心の修正は効かない


その後長男も昼寝から起き、再び奥様のもとへ。彼女は泣きながら洗濯物を片付けていた。その姿を目にして長男が心配そうに近寄る。


 「ママ、大丈夫?」


男の子は優しい。私はその姿を見て自己嫌悪とイライラがぶつかり合い、訳の分からない感情となってしまった。情けない話だった。


しばらくして仕事に向かう時間となった。ケンカ開始から2時間以上経過しているが奥様の状態は変わっていない。むしろ反抗して怒ってもらったほうが気持ちが良い気がした。怒りやイライラを通り越して私は心配になっていた。


「仕事行くから。何もしなくていいけど、子供にメシだけは食わせてね」


そう言い残して私は家を後にする。泣き続ける奥様達を残して。

会社に向かう途中で私は奥様にメールを送る。一人になったところで落ち着きを取り戻したのだ。奥様を泣かせてしまった罪悪感が私を襲った。


しかし、返信はなかった。仕事の合間に携帯を確認しても何の連絡もない。罪悪感が積もっていく。あんなこと言わなければよかった。


すべて後の祭りだった。結局仕事が終わって携帯を確認しても返信はなかった。発泡酒を買って家路につく。11時半。もうみんな寝てしまっただろう。謝るのは明日だ。


家に到着した。買ってきた発泡酒を冷蔵庫にしまう。風呂に入ってから食事にしようと思った。すると冷蔵庫の中にあるものを発見した。


私の大好きなビール。[ぴかぴか(新しい)]プレミアムモルツ[ぴかぴか(新しい)]だった。


その⑤へ続く


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プレミアムモルツ物語 その⑤ [家族]

「メールの返事がこれか」

奥様が私の悪行を許し、わざわざビールを買ってくれたのだと思った。感謝の気持ちと反省が入交り、ちょっとスッパイ気持ちになった。


みんなの寝顔を見にいこう


私は階段を静かに上がっていく。三人を起こさぬよう、そっと寝室のドアを開けた。そこには愛する家族が川の字になって寝ていることだろう。笑顔が自然に溢れた。



しかし寝室に家族の姿はなかった



「えっ」

思わず絶句してしまう。隠れて驚かそうとしているのか?奥様の名前を呼びながら、クローゼットや他の部屋を見て回る。いない!居るはずの家族が3人とも居なくなっていたのだ!!


私は急いで一階へ戻る。


風呂場や和室、やはりどこにも姿はない。


入れるはずのないトイレまで探し回る。


あそうだ。携帯!!


私はとりあえず奥様の携帯を鳴らす。


しばらくして聞きなれたメロディーがダイニングテーブルの上から聞こえてきた。




「まじかよ!?11時半だぞ。買い物?そんな訳ないよな!?」



私は仕事着のまま、家族を探して外に飛び出した。


その⑥へ続く

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プレミアムモルツ物語 その⑥ [家族]

最寄りのコンビニへ走る。

奥様の道の選択は熟知している。もし、買い物に行っていたのなら必ず出会えるはずだ。


しかし、コンビニ内にも家族の姿はなかった。


来た道とは別ルートを選択し家に戻る。淡い期待を持って家に入るが、やはり3人の姿はなかった。


「どうしちまったんだよゥ!?」


ダイニングの前でうずくまる。喧嘩したせいなのか?それとも子供を寝かしつけるために散歩に行ったのか?もう訳がわからなくなっていた。あのプレミアムモルツにはどんなメッセージがこめられているんだ!?まさか「さよなら」・・・


「冷静になれ」


おかしくなった精神に喝を入れる。冷静に考え直そう。

家に置いてあるものをチェックしてみる。何を持って出ていったのか分かり、行き先も判断できるはずだ!!


無いもの

1)今日買った奥様の靴
2)長男のサンダル
3)次男を抱えるだっこヒモ
4)家の鍵

あるもの

1)携帯電話
2)財布
3)自家用車
4)長男をのせるベビーカー(散歩時には基本的に使用)
5)兄弟のオムツといった生活用品

財布をもたない時点で強烈な心配が私を襲う。どう考えても10分もすれば家に帰って来る程度の持ち物だ。

様々な悪い考えが頭をよぎる。

産後の診断でも「産後ウツかも知れない」との診断があった。

「階段から家族三人で首をつっている所を想像したことがある」と冗談を言ったことも。

頭を左右にふって嫌な予感を振り払う。


これは両親に電話するしかない。 


私は車に乗り込み、最寄りの書店目指して走り出した。歩いて行けるとすればここが限界だと思ったし、他に行き場は考えられなかった。近くの公園なんかは、コンビニに行く前に既に確認している。車を走らせながら、双方の実家に電話する。一時の猶予もない気がした。


その⑦へ続く

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プレミアムモルツ物語 その⑦ [家族]

深夜12時だ。常識的に電話できる時間ではない。

しかし私は焦っていた。奥様が双方の両親に頼る部分がある為、どちらかの実家に行った可能性は高いと思った。容赦なく電話する。双方とも母親が出た。


「奥様と子供二人来てないよね?」


「どうしたの?」


「奥様と喧嘩してて・・・仕事から家に帰ったら全員いなくなってて・・・」


 「来てないよ」 


私はいきさつを説明する。結果はどちらの家にもいなかった。親に心配をかけただけの作業になってしまった。私の焦りはピークに達する。


閉店前の本屋に滑り込む。やはりここにも姿はなかった。もうあてがない。半泣き状態で車をユーターンさせる。家に到着もやはり3人はいない。ただ、ダイニングにある奥様の携帯が緑色に点滅しているだけだった。着信ありを通知する信号だ。


「これは緊急自体だ。」


やってはいけないとは思いつつ、奥様の携帯を開ける。

確認していないメールは8時半頃のママ友Aからのものだった。「お風呂に入っていたためメールに気がつかなかった」というものだった。

その前の私のゴメンナサイメールママ友Bのメールは確認済であった。「明日何して遊ぶ?」的な内容だった。


着信、発信履歴も電話、メール双方確認する。

結果はなんの履歴も残っていなかった。ママ友に頼ったという線も消えてしまった。ますます事故の可能性が膨らんだように感じ、恐怖を覚えた。


しかたがない・・・


私は自分の携帯を取り出す。親指は 1 1 0 を押していた。

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プレミアムモルツ物語 その⑧ [家族]

「はい、110。緊急コールです。事件ですか?事故ですか?」


深夜であろうと警察は動いていた。ありがたいと素直に思った。私は経緯を半泣き状態で説明する。

警察の質問は無くなっているものの確認など、事件であるか否かが焦点になる。単なる外出による勘違いではなく失踪や事件の可能性が高いと判断されたことで、静岡中央署の連絡先を告げられた。より具体的な作戦が必要なのだ。


今度は中央署に連絡を取る。結果、警察官が我が家にやってくる事になった。その到着までの間も家の確認をしておけとの事で再度確認する。


やはり敷地内にはいない。風呂桶を確認するとお風呂には入った模様であった。財布内のレシートも確認する。プレミアムモルツは7時頃に近くのスーパーで購入したようだった。


ヒントになりそうなものは何もない。手紙が置いてあるわけでもない。何もできない自分に憤慨する。その時、自分の父親から連絡が入った。


「今から行くから!」


「何もできないから来なくていいよ!!」


心配してくれるのはありがたいが、応える余裕もない。しかし、無理やり電話を切られた。どうしても心配で家に来るようだ。まあ、いい。好きにしてくれ!


そうこうしている時、玄関のチャイムがなった。


その⑨へ続く

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プレミアムモルツ物語 その⑨ [家族]

警察官が二人リビングにいるだけで随分ものものしい雰囲気になるものだ。

いつもののんびりした光景が一転した。そんな状況なのだ。


いわゆる事情聴取が始まる。家の中の状況であったり、家族の持ち物であったり、服装であったり。特殊な状況が客観的に感じさせる。当事者のはずなのに・・・


おおよその聴取が終わった頃に両親も到着した。

両親も警官に頭を下げる。ばつが悪い。それでも少し安心したことは事実だった。


一人の警察官が無線を飛ばす。


「深夜でもやっているお店や公園中心に捜査開始して・・・・・」


私の消えた家族の説明も付け加えられた。深夜の為、本当の「捜索願」は明日、中央署で行うように告げられる。ここまでくると実感が薄れ、訳が分からなくなっていた。同じ説明を両親にも入れている。親が頭を下げる。色んな意味で辛かった。


「それではこれで帰ります。深夜だからママ友や関係者には電話しないでおきます。もし、旦那さんがどうしても確認したい人がいれば直接電話してみて下さい。」


深夜一時頃。そう言って警察官は帰っていった。

私は途方に暮れていた。連絡しようにも、奥様の電話にママ友とやり取りした形跡はない。私は奥様の白い携帯電話を見つめていた。


最終話へ続く

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プレミアムモルツ物語 最終話 [家族]

白い携帯は沈黙を続けている。

鳴るとすれば、犯人からの身代金要求ぐらいだろうか。そんな有り得ない考えまで私の頭に浮かぶほど切羽詰っていた。とにかく藁をもつかむ思いだった。


意を決して奥様の携帯を手にとった。深夜であろうと迷惑など気にしていられない。少しでも手掛かりがあればいい!!私はアドレス貼を開き、なかからママ友Bの電話番号を見つけ出した。私はためらいなく通話ボタンを押した。


無機質なコール音が続く。やはり出ないなと思っていたその時。


もしもし

つながった!


夜分遅くに申し訳ございません。うちのがお邪魔してないでしょうか?」

お邪魔してなければ「何言ってんだ」的な質問だ。だが、体裁など気にしてはいられなかったのだ。直球のみで質問した。



「います」



驚いた。それと同時に全身の力が抜ける。その場に座り込んでしまった。

今、家族三人で寝ているそうだ。明日、送り返すとのことだった。一通りのお礼をして電話を切る。「通話履歴がないのにどうやってママ友Bの家まで行ったのか。」「オムツやお金、その他道具は一切持たずに出ていって大丈夫だったのか。」そんな疑問はどうでも良かった。

両親に警察を呼び戻すよう動いてもらう。奥様の両親にもすぐ電話を入れ状況を報告した。

私が忘れていた食事を取り終えるまで両親は家に居てくれた。言葉にできないほど感謝と申し訳なさでいっぱいになっていた。



様々な人を巻き込んだ失踪劇は「ママ友の家に逃げていた」という単純な結末で終焉を迎えた。もう、奥様に対する怒りとかそんなものは何もなかった。


ただ家族が無事でいてくれた。それだけで十分だった。



今宵の[ぴかぴか(新しい)]プレミアムモルツ[ぴかぴか(新しい)]はフルーティーでありながら実にほろ苦かった。




END



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カーズ2 [家族]

うちの長男(2歳10ヶ月)はカーズが大好きだ。

最寄りのレンタルDVD屋で10回以上借りている。返したその足でまた借りるという荒技を繰り出したことも1度や2度ではない。


そんなカーズの中に登場するいぶし銀のキャラクターがドックハドソンだ。


ドッグハドソン.jpg
彼との出会いでカーズの主人公ライトニングマックイーンは人(?)として成長を遂げることとなる。

昨日、カーズ2での登場も楽しみに、新作DVDを240円も出してレンタルした。むしろ、息子より大人の私が見たかったのだ。しかし、ドッグハドソンは登場していなかった。原因としてはアメリカで声優を担当していた方が亡くなられたようで、アニメ上でもドックハドソンは亡くなった設定になっていた。



少しがっかりしたが、うちの長男がそんな彼へのはなむけにある行動に出た。


トイザらスでカーズのトミカに目をつけた彼は「これがいい!」といってドッグハドソンを選び出した。主人公であるマックイーンには目もくれずにだ。センスあんじゃん!!


「マックイーンもあるよ」と一応私も声をかける。


息子は言った。  「ドッグハドソンが一番かっこいい」



ドッグハドソンは子供たちの心の中で生き続けていた。


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くまスーツ [家族]

うちの次男は甘えん坊の泣き虫だ。

もうすぐ9ヶ月になるが、昔からの泣き虫スタイルに変更はない。

血液型がBBだからなのか。非常に寂しがり屋なのだ。


両親の姿が見えなくなっただけで甘えた声を出し、直ぐに泣き始める。

一人で遊んだりできる時間は限りなく短い。

抱っこすれば静かになるのだが、一日中抱っこという訳にはいかない。
可愛いがウザい・・・時もあるのだ。奥様も毎日大変だと思う。


そんな彼は夜泣きもまだしっかりと行なっている。これがキツイ。

睡眠中にたたき起こされて、睡眠不足になるのはどの親も一緒。誰もが経験することだ。だから、どのご家庭も各々の対策で苦労しながら乗り切っていることと思う。


かく言う私にも一つの強力なアイテムが存在する。

それがくまスーツだ。


くま.jpg


「抱っこして赤ちゃんを寝かせ、ベットに置こうとするとまた泣き出す」

いわゆる着地失敗と育児用語では言うが、このくまスーツを着せることで着地失敗の可能性が激減するという事実がある。

包み込まれている感が良いのか、原因は不明だ。しかし、夜泣きで苦戦している家庭があれば一度試してもらいたい。上記の写真は一例であって、家で使用しているものとは異なるが、タオル地でモコモコしたツナギであれば何でも効果を発揮するものと思われる。


是非、試してみて欲しい。

ただ、夜泣きや泣き虫キャラも一時のことかも知れない。私も楽しむように心がけたい(これが難しいのだが・・・)。

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家族旅行 その① [家族]

3月13日(火)14日(水)で有給をとった。

家族で旅行に行くためだ。

長男が産まれてから3年余り。考えてみれば奥様が長男を妊娠してから、宿泊を伴う旅行はしていなかった。長男が幼稚園に入る前の貴重な平日休み。私達家族4人は朝9時半頃、東京に向けて出発。ナビは「東京ディズニーリゾートオフィシャルホテル・東京ベイ舞浜ホテル」を指していた。


天気も良好。日頃の行いが良いからだろう。ウヒっ

東名高速道路も順調。首都高速に関してはしょうがないとしても、12時頃に目的地に到着できたのだから良しとする。

車をホテルの駐車場へ。さあ、ホテルから舞浜駅へ公式バスに乗ろう!


trans_ph02.jpg


満員のバスに乗り込む。とても座れそうにない中、ベビーカーと子供を抱え通路を進む。しばし辛抱だ。しかも次男のオムツが異臭を放っている。ウンコしているに違いない・・・。


こちらどうぞ


一人の女性が席を譲ってくれた。

流石は夢の国行きのバス。皆さんやさしい。

異臭に包まれながらも少しいい気分になった。


バスは5分ほどで舞浜駅に到着。

駅からは徒歩で夢の国へ。平日の昼ということで、夢の国へ向かう人の波もそれほど大きくはなかった。高架を通って行くため、ベビーカーに次男をのせたまま階段を登る。

きついが、年甲斐もなく私のテンションも上がる。

新しくできたディズニーランドに隣接するお城のようなホテルを横目に私達家族は夢の国にその一歩を記した。


その②へ


ちなみに長男・次男だと何となくテンションが上がらないので、長男=みずき 次男=つかさ と表記することにしよ。



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